抄録・内容(日) | I 目的と課題 : 本稿の目的は, 東アジア鉄鋼業の競争構造を解明するための基礎作業として, その生産能力と企業群の構成, 国際分業の現状を明らかにすることである. 鉄鋼は現代社会において基礎素材の地位を占めている. 建築物, 機械, 自動車・家電などの耐久消費財は構造材・機能材としての鉄鋼によって支えられている. 経済発展のサイクルから言えば, 一人当たりの鉄鋼消費量は, 工業化の初期において上昇し, やがて横這いとなって, 経済の成熟とともに低下に転じる, と言われている. 図I-1を見ると, 日本が低下局面に入っていると推定されるが, それにしても, かつて木材の地位を鉄鋼が奪ったほどの根本的な素材転換が生じているとは考えにくい. また, 他の東アジア諸国は一人当たり消費が低水準にあるか, 急速に上昇しつつあるかのいずれかである. …… |