抄録・内容(日) | 糖尿病性腎症は, 現在でもわが国の慢性透析療法の原因疾患の第1 位を占める重要な基礎疾患である. 従来, 古典的には, 微量アルブミン尿, 顕性蛋白尿(マクロアルブミン尿), 腎不全期と腎症病期が進行すると考えられてきた. 近年, アルブミン尿を有さず腎機能(estimated glomerular filtration rate;eGFR)低下を示す非典型的な症例が増加してきており, 糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease;DKD)の概念が提唱されている. DKDでは, マクロアルブミン尿やeGFR低下合併は腎予後および生命予後不良である. これまでの大規模臨床試験により, 厳格な血糖管理がDKDの進行予防には重要であることが確立されてきた. さらに, 近年, 新規糖尿病治療薬であるSGLT2(sodium-glucose cotransporter 2)阻害薬およびGLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作動薬が, DKDの発症進行予防に有益であることが相次いで報告されている. SGLT2阻害薬は, アルブミン尿低下作用, eGFR低下進行抑制作用が認めるが, 高度腎機能低下例では血糖低下作用が期待できない. 一方, GLP-1受容体作動薬は, eGFR低下抑制作用はみられないがアルブミン尿低下作用や高度腎機能低下例でも血糖低下作用を示す. 今後は, DKD発症進行予防の治療戦略として, 個々のDKDの病態に応じてこれらの腎保護作用を示す治療薬を選択し, 良好な血糖管理を達成することが重要である. |
抄録・内容(英) | Diabetic nephropathy is an important primary disease which causes induction to chronic dialysis therapy in Japan. It has been considered to typically progress in order of microalbuminuria, overt proteinuria (macroalbuminuria), and endstage renal disease. However, non-typical cases of diabetic nephropathy, who have decreased estimated glomerular filtration (eGFR) without albuminuria, are recently increasing. In 2018, the Japanese Society of Nephrology and Japan Diabetes Society has proposed the comprehensive concept of diabetic kidney disease (DKD).... |