抄録・内容(日) | 本稿では, コンヴァンシオン経済学における価値づけというテーマの展開を明らかにするべく, 価値づけ論の概念的要約, 価値論の検討, 価値づけの権力という概念の導入, 搾取概念の再定義について整理をおこなった. コンヴァンシオン経済学の観点から価値づけの基本的な契機をまとめると以下の3点になる. 1. 価値とは価値づけの作業の結果であるが, その作業は, 一般的に共有される基準を具体的状況において引照し, 解釈し, 利用してなされる実践である. 2. 複数の価値基準が存在する. 3. 経済的価値と規範的諸価値という分断は棄却される. コンヴァンシオン経済学はアクターが有する政治的能力を強調することで, コーディネーション概念を(価値)判断のコーディネーションへと拡張し, 規範的な意味での諸価値に重要な位置づけを与える. そしてこのことを通じて, 価値基準の制定および諸物の価値づけをめぐる権力の所在(「価値づけの権力」)や, 労働・分配の問題(搾取)といった政治経済学的な論点を分析の俎上に載せる. そこでは, 搾取は, 客観的価値の計算の論理的帰結ではなく, まさにアクターの政治的能力がかかわる正当化や批判の言語として再定義され, また価値づけの権力の問題として捉え直されることになるのである. |