抄録・内容(日) | 本稿の主題は, 「完全性」(完全競争, 完全情報, 収穫不変)の仮定を満足する経済で, 経済主体の差別的態度が, 能力において全く等しいW群労働者とB群労働者との間に賃金格差をもたらすかということである。「完全性」の下では, 「企業家」の差別的態度は賃金格差をもたらさないことを主張するBecker-Arrowのモデルとは対照的に, 我々のモデルでは, 労働者以外に, 人的生産要素として, 労働者と不完全に代替的な「技術者」が存在する。このモデルのもとでは, W群技術者のB群労働者に対する差別的態度が存在する限り, 主題に対する答えは, ある条件の下でイエスである。その条件とは, B群における技術者・労働者比率が, W群におけるそれより小さいことである。W群技術者のB群労働者に対する差別的態度を表す係数と両群の技術者・労働者比率との組合せに依存して, 経済で成立する均衡の種類が決定される。 |