抄録・内容(日) | 本稿では, 世代重複モデルを用いて, Kim(1989)モデルの経済成長モデルへの拡張を行う。本稿の主要な結論は以下の通り。第1に, 人的資本蓄積が最終財の生産性に対して正のスピルオーバー効果を持つ場合には, 内生成長均衡が存在し得る。第2に, 分業による収穫逓増を伴う生産技術と新古典派的生産技術が利用できる時には, モデルのパラメータの値によっては, 分業の度合が低く, そのために人的資本投資も低迷し, ゼロ成長状態に至るという, いわゆる「経済発展の罠」が生じる場合もあり得るし, 内生成長均衡と外生成長均衡が同時に存在する場合もあり得る。第3に, 本稿のモデルにおいては, 労働人口や最終財生産における固定費用の大きさが重要な役割を果たす。例えば, 豊富な労働人口は大きな市場規模を意味し, そのために分業のメリットも大きい。したがって, 分業の度合いが高まり, それが人的資本の蓄積を促し, その人的資本の持つ正のスピルオーバー効果を通じて, 持続的な成長をもたらすことになる。 |