抄録・内容(日) | 序 : 言語獲得に関する研究は, 現在に至るまで, 大別すると, 2つの代表的な見方に基づいて行われてきている。一つは言語能力を後天的なものと捉える立場で, もう一つは生得的なものと考える立場である。これは, 乳幼児がインプットデータをどのように扱うのかという問題に対する見解の相違と捉えることができる。つまり, 前者は, インプットデータが言語獲得のための必要十分条件であり, 世話をする人から乳幼児への語りかけがなければ言語は習得されないと考えるのに対し, 後者は必要条件でしかなく, 乳幼児には, 少ないインプットや誤ったインプットからでも正しい言語を生成する能力が生得的に備わっていると捉える。本論の目的は, 上述の, 今まで対立的な関係にある言語能力の生得性・後天性に基づく言語獲得理論を, 新たに認知科学研究の成果を取り入れながら, 神経心理言語学の観点から検討することにより, より適切に説明することができるモデルを構築することが可能かどうか検討することにある。…… |